第1章 君と二人
「由!!ほら、街へ行くぜ!」
そう言って賑やかな祭りに連れ出したりして外の世界を知った由
友達も出来たというのに、それがまさか自分の食事だなんて…
知ったらお前はどんな顔をする?
でも多分お前のことだから薄々どこかでは感じているんだろうな
「たこやきうめー!!お、りんご飴もあるぜ!」
「食べてばっかりだね。黒狐」
俺は確かに食い意地も張っているかもしれない
本物の食事にしたら勿論劣ってはいるけれど
でも、これはお前の気を紛らわす為にしたことでもあって少しでも今の世界を忘れて楽しみに浸ってほしいとか何とか考えてる
急がなくていいんだ、お前のペースで、ゆっくりと
「由、由!?全く身体弱ぇんだから無理すんなって言ってんのによ…」
「えへへ、ごめんね……」
たまに子どもみたいな面して笑やがる
ふわりと全てを包みそうな包容力
あの人に似ている
それを重ねることもあるかもしれない
「眠るまで側に…いて…黒狐」
けど、由は由だって
こいつの声を聞くたびに感じる
「美味しそうだな……!!!」
「由!!!」
悪食が由に襲いかかろうとする
こいつは何も悪くないのに
無邪気な顔していればいい奴なのに
でも、大丈夫大丈夫だからな
いつでも俺がいる
お前の無邪気な笑顔を涼やかなその心を絶対に守るから
「大丈夫だ…お前は……何もしなくて…」
苦しそうな顔をするな
お前は笑えばいいんだよ
「由。ほら、立てるか?」
「うん。ありがとう黒狐」
そうそう、それでいてもらわなくちゃ困る
何があっても俺は俺だけはお前の側にいる
だから
安心して笑え
なぁ、由