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道化師恐怖症。

第32章 その毒林檎、一口ちょうだい




「どんなのでも
すぐ取っちゃいますからね。
きっと驚きますよ?」


きっと、この人だったら
すごいすごいと声をあげて


「どんだけ難しくっても
蒼先輩が欲しがるやつ」


プレゼントしてあげたら
最初は遠慮して、でも照れくさそうに
嬉しそうに笑って


「気に入るやつ、なかったら
いろんな所回って探します」


もし、途中の雑貨屋とかで
可愛いのがあったらすぐ買いますよ

何でもない日でも
プレゼント、いいじゃないっスか


だから

だから


「起きて、くんないっスか…?」


アナタが起きてくれなきゃ
なんにもしてあげられない

喜ぶ顔が見たい

明るい声が聞きたい


近くに、いてほしい


「…泣き虫だなぁ」


溢れる涙が頬をつたり、服に
小さなシミをつくる

袖で乱暴に拭おうと
まぶたを痛めつけた時

俺じゃない声

聞きたかった、声


「…え、」

「目、腫れちゃうよ」


何よりも願ってた
アナタの笑顔を見た時、俺は
どうなってしまうんだろう

簡単だった

ただただ、また溢れた


「蒼先輩…!!!!」

「へへ…おはよう」

「おはよう…ございます!!!」


その時まで俺は知らなかったけど
悲しい時より、嬉しい時の方が
涙ってボタボタ出てくるんだな

きっと俺の顔は
かなり凄いことになってるはず

だけど、もうどうでもいい

蒼先輩が、目を覚ました…


「あ、そ、そうだ!
医者呼ばねぇと…」

「あぁ…。ナースコール押すね」


近くにあるナースコールを押し
身体を起こそうとする蒼先輩を
慌てて止める


「だ、駄目っスよ!起きちゃ!
すぐお医者さん来るんスから!!」

「はーい」


あぁ…ビックリした
あ、そうだ
前城先輩と、蒼先輩の親さんに
すぐ教えなきゃ…

携帯を取り出し急いで指を動かす


「ねぇ、赤也くん」


やっと見つけてトークを開いた時
声をかけられそっちを向く


「?」

「赤也くんの声、聞こえてたよ」


そう言って笑った蒼先輩を見て
また俺の目から
あったかい雫が零れた



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