第1章 出会い
「…………変なやつだった」
「それ答えになってないよ」
隣で八尋が苦笑する。
「俺を見ても恐がらなかった」
「へぇ……それは確かに珍しいね。喧嘩慣れしてる女の子とか?」
「いや…………」
全くと言っていいほどそうは見えなかった。
むしろ儚い印象というか、身体も細くて華奢だった気がする。
「とにかく変なやつだったな。全然喋らねぇし」
「無口なのは燈斗くんと一緒だね」
「…………」
否定はできない。
自ら会話を進めるのは苦手だ。
「燈斗くん、その子のこときになるの?」
「………………さぁ」
気にならないといえば嘘になるが、それは彼女が今まで見てきた女と全く違ったからだ。
興味はあるのだろう。
だが同じ学年ならまた会えるだろうし、会えないならそれでも構わないと思っているのも事実だった。
物珍しいものに興味をそそられているだけで、その内記憶から薄れていくだろう。
「まぁ、きっとその内また会えるよ。同じ学校なんだし」
八尋はにっこり笑うと、その話は終わりだと言うように別の話を始めた。
校長の話が長くて眠くなっただとか、隣の席の女の子が気さくで話しやすかっただとか。
そんな話を聞いている内に、俺も屋上で出会った女の子など気にしなくなっていた。