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トワイライトメモリー 【白】

第3章 人気者


「お前、いつもあんなんに絡まれてるのか」


そう尋ねると、椎名は少し困ったような顔をした。
はっきりと肯定はしなかったが、その表情が何よりの答えだ。

俺は小さくため息をつくと、コツンと椎名の頭を小突いてやる。


「少しは俺達を頼れ」


そう言ってやると、椎名は驚いたように目を見開き固まる。
自分でもらしくない言葉だと思うが、なぜか椎名を放っておけないと思う自分がいるのも確かだ。


「…………ありがとう」


椎名はもう一度そう礼を言った。
その表情はどこか嬉しそうに見える。
そんな表情を向けられるとなんだか気まずくて、俺はそっと椎名から視線を外した。


「…………今日の燈斗は優しい」

「うるせぇ。らしくないのは俺が一番わかってる」

「そんなことない」


フッと笑う気配がして視線を戻せば、椎名は柔らかく微笑んでいた。
初めて見るその表情に、俺は一瞬釘付けになる。


「燈斗は優しい。私はよく知ってる」


真っ直ぐ目を見て言われれば、自然と頬が赤くなるのを感じた。
今度はサッと顔を椎名から背けると、クスクスと笑われる。


「燈斗、照れてる?」

「うるせぇ。俺は帰る」


そう言いスタスタと歩き出すと、椎名はもう一度「本当にありがとう」と礼を言った。
今日は礼を言われてばかりだな…………

廊下を進みながら、今日は色んな椎名を見れたなと思う。
怒ったところも、笑ったところも。
自分の知らない椎名をたくさん知った。

人気者であるが故に友達がいなくて、一人ぼっちで

椎名自身も一人でいることを望んでいる。
それが何故なのかはわからないし聞いても教えてはくれないのだろう。

だが、それでも
椎名が俺達といることを楽しいと思ってくれているのなら
その時間だけは彼女が寂しくないようにしよう

一人そう思いながら、俺は学校を後にした。
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