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第1章 リゾット


「こっちへ来て、横になりなさい」

リゾットが膝を叩く。最初の頃は恥ずかしかったけど、真面目なリゾットの瞳に、今ではすっかり全てを委ねている。

「はい」

ソファに座ると大きな手が背中を支え、そのままころりとリゾットの膝に頭を乗せて目を閉じる。
きゅこ、と蓋を開ける音が聞こえ、それからいい香りの大きな手がそっと頬に触れてくる。

「…冷たくないか」

「大丈夫です」

私を拾ってからずっと、リゾットはこうして毎日治療をしてくれる。目立つこの火傷の傷跡を、理由も聞かず恐れもせずに、ただ静かに、もう何年も、毎日オイルを塗りこんで優しく優しくマッサージしてくれる。

「…どうした?」

「なんでもないです」

「痛いときは言いなさい。前を開けて」

「はい」

ぷち、とパジャマのボタンを外す。リゾットのお下がりをそのまま着ているからとても大きい。

「…」

「…最近」

「どうした」

リゾットの手がひたと止まる。

「…最近、動かすのがとても楽になって来ました」

ほ、とリゾットの体から緊張が抜ける。

「…そうか、良かった」

不意に伸びをしても、昔のような痛みに襲われない。リゾットの治療のおかげだった。
今日も優しく、強く、私の赤い引き攣れを優しい指がなぞって行く。
両手で頬に触れ、首をなぞり、腕の付け根から胸、お腹へ。逆の順序で、今度はゆっくりと。


「ふぅ…」

「…大丈夫か」

「少しくすぐったいだけ…」

リゾットの手が止まって、少しだけ力を抜いた撫で方に変わる。

「…ずいぶん胸も大きくなったな」

ふんわりと、大きな手が優しく包む。

「はい、チクチクするのも止まりました 」

胸が大きくなるにつれて、皮膚が引っ張られてとても辛かった。ことさら弱い場所の皮膚が裂けてしまわないようにと、特に注意して丹念に丹念に揉んでくれた。

「…そうだ、肌には絹のパジャマが良いと聞いたぞ。今度手に入れてやるからな…」

「んん、リゾットのお下がりが好きです」

じっと目を合わせると、ふ、と微笑んで、それからそっと唇が降りて来た。柔らかい唇の優しい口付け。

「ナナイ…良いから、甘えなさい」

ああ、財布の心配をしたのではないのに。久しぶりに貰った口付けに、妙な…恥ずかしいようなむず痒さを覚えて、私はギュッと目を閉じたまま、優しい熱い掌が止まるのを待った。
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