ありきたりな設定とイケメンのちょっと普通じゃない話
第12章 夜風
海軍本部は慌ただしかった。
どうやら凶悪犯がどうのこうのという話だったが、リンはそんなことどうでもよかった。
案内された部屋に入ると、アフロなのかアフロじゃないのかよくわからない髪型をした、丸メガネの男がいた。
「私がセンゴクだ」
「頭の方は大丈夫か」
「アレは気にするなと…まぁいい。見ての通り今とても忙しい。そこで、お前さんにも手伝ってもらう」
リンは眉をひそめる。
「…てっきり空白の100年だの世界の歴史だの風の声を死ぬまで聞けと言われるものだと」
「それはもうやっている。お前の前のフワフワの実の能力者がな」
「…その人は」
「最後は狂って逝った、と記録が残されている。最も、これは上層部の人間しか知り得ない」
「で?私は何を手伝えばいいの」
センゴクはお茶をすすり、姿勢を整えた。
「これから起こるであろう戦争に、参加してもらう」
リンは動けなくなった。
戦争。多くの命が奪われ奪い合う行為。泣き叫ぶ声や鮮血の色が蘇る。
「……何と、戦争するの」
「ある海賊とだ」
リンは与えらた部屋のベッドに突っ伏した。
火拳のエースという男が捕まり、インペルダウンに収容されているという。処刑の判断がいつかは下されるだろう。その時、エースの所属している白ひげ海賊団が押し寄せてくるのではないかということだった。
しかし、リンにはそんなことはどうでもよくて。
「…」
ローと、ハートの海賊団と引き離されたショックと一連の話とで疲労していたリンは、知らないうちに眠っていた。
目を覚ましたのは、少し寒いと感じたからだった。
「お、起きたか」
「……青…猿だっけ」
「青キジね。それとクザンって読んで」
「あぁ、鳥だ…キジ…クザン…」
どうやらクザンの部屋のソファに毛布で包まれて寝かされていた。
「いつの間に移動して…ていうか、寒い」
「ごめんね、おれはヒエヒエの実の能力者だからだ」
「なるほど…で、なんで私ここに」
「言ったじゃないの、補佐として働いてもらうよって」
「…あぁ。で、何をやれば?」
「特にない」
「Σじゃあ連れてくるな‼︎」
「まぁまぁ落ち着きなさいよ。少し話をしよう」
そう言って、クザンは椅子に座りなおした。