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フルーツポンチ【Mr.FULLSWING!!】

第2章 一山いくらの林檎 後


・・・えっと。
牛尾も起き上がったとこまではいいんですけれど。
なんであたしは今、牛尾に抱き締められているんでしょう?

「あのー・・・牛尾さん?」
あたしの肩に顔を埋めて、牛尾はあたしを抱き締めたまま動こうとはしなかった。
まさか泣いてる?なんか震えてない?えっ?なんで?あたし何かした?
「ちょっと、どうしたの?」


「・・・君はもっと自分を大切にするべきだ。」
顔が見えないまま聞こえた声は、牛尾らしからぬ弱々しさをはらんでいた。
「なんでよ?自分の好きなように生きてるわよ。」
「だったらなんでそんなに自分を卑下するんだい?」
どう答えるか悩んで牛尾の頭を撫でた。初めて触る牛尾の髪は絹糸のようで、心無しか高貴な良い香りが漂って来た。



解答を導き出したあたしは、言葉を紡ぐために口を開く。
「だってあたしには価値なんて無いもの。」
大学の勉強にはついていけない。同期とは馴染めず、友達と呼べる人間はほとんど出来なかった。
おかげで大学から足が遠のくようになった今では、留年という2文字が顔を覗かせている。
趣味や特技があるわけでもなく、私にしか出来ないというような強みも無い。おかげさまで就活は困難を極めている。
どこにでもいる代替の効く、いやそれ以下の、ただ消費されていく人権の無い奴隷のような存在。

「あたしの体なんて、2000円もしないわよ。」

何を大切にする必要があるんだろう?
あなたみたいな素晴らしい人こそ、大切にされてしかるべきなのに。
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