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フルーツポンチ【Mr.FULLSWING!!】

第2章 一山いくらの林檎 後


牛尾がゆっくりとこっちを向く。相変わらずの柔和な笑顔。
その笑顔を見ただけで、自分の理想とはかけ離れている現実に腹が立って、短絡的なあたしは何も考えずにどうしようもない言葉を口走っていた。
「抱くの?やめるの?どうするの?」
言ってしまえば後の祭り。しかも決定権は相手に投げるという責任転嫁っぷり。
あたしは今後の事を考えるのを放棄した。




ぎしっ。
ベッドが揺れて、牛尾があたしの横、すぐ近くに寝転がった。

「それもいいかもね。」

まさかの返答に、あたしは自分で言っておきながら心臓が跳び跳ねた。
牛尾のこんな一面が見たいと思ったのは自分のはずなのに、牛尾ならきっとそんな汚い期待を裏切ってくれるだろうと思っていたんだ。調子のいい自分に心の底から辟易する。
すぐ隣に寝転がる牛尾と目が合う。首を伸ばせばすぐにでもキス出来そうな距離だ。
こんなシチュエーションだからなのか、牛尾はいつもと同じ笑顔のはずなのに、いつもの爽やかな笑顔とは違って見えた。
「あぁでも、お返しの予算は2000円ほどなんだろう?」
牛尾は子供のように朗らかに言う。急に何を言うかと思ったけれど、そういえばプレゼントのお返しという話だったっけ。
「つまりこの場合、あたしの価値が2000円ってこと?」
援助交際風に言うと1回2000円かしら。
「そういう事になってしまうね。」
「何言ってんの!」
あたしはガバッと勢い良く起き上がった。

「あたしの体はもっと安いわよ!」

あたしの発言に、ようやく牛尾はその貼り付いたような笑顔を崩した。
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