第158章 番外編《それぞれの“これから”のすごしかた》
「っ…、リヴァイ、やっぱこれ、」
「もういいだろ。
お前も三年間我慢したんだ。
溜まってんだろ?」
そう言い切った途端、凛の震える声は、微かな笑い声に変化した。
「……それ、なんか懐かしいね。」
凛が笑った意味は直ぐに理解できた。
「確かに。
出会ったばかりの頃に、言ったことがあったな……
溜まってるなら相手をしてやる、と。」
「そこまで強引な言い方じゃなかったけど。」
顔を見なくても、凛の顔が綻ぶのが分かる。
それでもその顔を見たくて、少し身体を離して凛に視線を向けた。
「同じ言葉なのに、全然違う言葉みたい。」
「……そうだろうな。」
この緩んだ表情も、何てことない発言も、凛の全てが愛おしい。
こいつを探すことを諦めようなんて考えたことはなかったが、必死に凛を探している自分を不思議に思うことはあった。
だが今こうして凛の笑顔を目の前にすると、自分の潜在意識が凛を強く求めていた意味が、分かったような気がした。
「リヴァイ、なんかすごく穏やかな表情するようになったね。」
頬に当てられた凛の手に、自分の手のひらを重ねる。
「俺はいつも険しい表情だったか?」
「いや……そうじゃないけど、あの世界に居た時とは違うなぁって。」
「違う?」
「やっぱりこっちの世界の方が、気を張らずに生活できてるんだと思うよ。」
頬をさする手のひらが温かく、優しい体温が伝わる。
触れられているのは手のひらだけだが、衝動的に目を閉じてしまうような心地良さが、全身を巡っている気がした。