第154章 君と鼓動が重なる時
「……そこはもう建前上、嘘だと思ったとしても認めてくれたらいいのに。」
「俺が見逃せる訳がないだろう。
そもそも、吐き通せない嘘は吐かなくていい。」
腰を引き寄せられ、強く抱きしめられる。
それを受け入れると同時に、隙間なく凛の身体に自分の身体を密着させた。
凛の身体は異常なほどに熱い。
シャツ越しでも、その体温が鮮明に伝わる。
「大丈夫。
君が心配しなくても、俺もリヴァイも、また段々自由にし始めるよ。」
「……本当に?」
「ああ。」
もうこうでも言わないと、彼女はずっと気にし続けるだろう。
こんな別れの間際に、わざわざ凛の心配を濃厚にさせる必要はない。
取り敢えずそう言っておけばいい。
「エルヴィンも私を言いくるめようと、その場凌ぎのこと言ってる気がするけど、そこは私が目を瞑ればいいの?」
凛の思いがけない発言に、一瞬言葉を失ってしまう。
顔が見えない状態でも、こうして簡単に本心を読み取ってくるのが彼女の怖い所だ。
「……君もそんなことを言わず、建前上納得してくれればいいじゃないか。」
「……そうだったね。」
凛の吹き出した吐息で、また物理的にも感情的にも胸が熱くなる。
この様子だと、俺の本心はどう足掻いても彼女には筒抜けなんだろう。
それなら、今の感情に素直になればいい。
「凛、もっと君に触れたい。」
不意に込み上げた願望の意味をすぐに察してくれた凛は、顔を上げ、唇を寄せてくれる。
近付いた唇を唇で受け止め、もう決して忘れることのないように、この感触を、幸福感を、心から味わうようなキスを何度も何度も繰り返した。