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【ハイキュー!!】青息吐息の恋時雨【短編集】

第32章 まだ間に合うからジュリエット(牛島若利)



「昨夜、 ちゃんと眠れたのか」

「寝たよ、 隣で寝てたでしょ」

本当に"何もない"穏やかな夜でしたね!


「朝食は」

「食べたよ、いっぱい」

「ホルモンのバランスが崩れているのかもしれない」

冷蔵庫の開く音と一緒に、 前になまえが言っていただろう、 と牛島が喋る。 「排卵日の前後は情緒不安定になると。 自己管理はしっかりしたほうが良い。 日付で言えばそろそろ……」


「それ以上何も言わないで」

ガスの火を止めた。 振り返ると、 牛島は無言でミネラルウォーターの口を開けていた。 上着は暑くて脱いだのだろう。 Tシャツを着ていた。 彼の顎から汗がぽたりと落ちた。

「お願いだから、 」と私は深呼吸をする。 「まずキッチンから出てって。 それからシャワーを浴びてきて。 話があるならその後にしましょう」

何の話をするかは知らないけれど。




牛島は怒った様子もなく、 頷いた。



すんなり出て行く彼に、 素直か!と心の中で突っ込む。 セクハラまがいの発言したのに小さい子どもか!なんだよ可愛いムカつく可愛い!


浴室へ向かうその背中に抱きつきたいような、 菜箸を投げつけたいような気持ちになる。


妙なところは鋭くて、 大体は鈍感で、 私のことなんて興味がなくて、 でもちゃんと見ているような節もあって。 でも私のために彼が何かを我慢するなんてことが、 今までにあっただろうか。 いや無い。


好きだけど嫌い、 ムカつくけど可愛い、 でもやっぱりカッコいい、 もっと嫉妬してほしい。 私のことでもっと心を乱してほしい。 青城メンバーでの旅行中、 万が一でも私が何かしらのそういう過ちを犯したら牛島はどんな顔してくれるんだろうか。 金を払えばあの4人の中で一番頭の軽い誰かは手を出してくれるかもしれない。


バカか、 と呟いて菜箸を置いた。 私は何がしたいんだ。 これじゃ花巻の言う通り、 ただの面倒な彼女だ。 死ね。 花巻が死ね。 お前ら全員並んで吹っ飛べ。


牛島の指摘通り、 私はそういう時期なのかもしれない。 けれどホルモンなんて目に見えない物質にご機嫌が左右されるなんて思いたくもなかった。

バカか、 ともう一度呟いてシンクに寄りかかるようにした。 無造作に置いた手が、 フライパンに触れた。 「熱ッ!」と声に出た。 最悪だ。

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