第29章 隣の客は毛色が違う(天童覚)
「足がしびれた」
自分でも驚くほどに棒読みだった。「て、天童、タスケ………」
言いかけた僕の上に、足がもつれたのか何なのか、天童がバタリと倒れてきた。なんかもうワザとやったんじゃないかってくらい容赦なく突っ込んできた。「ふッざけんなお前!」と僕は久々にぶちギレる。「重い!」
「ムリ、」
「天童!」
「俺は生まれたての小鹿」
「梶井さぁん!!!」
悶絶しながら訴える僕の涙はダイヤのように透明度が高く、綺麗だったよ、と後に天童が教えてくれた。
「先生起きて!目を覚ましてぇ!不純異性交遊がああぁ!!!!」
僕らの頭上にかかった時計は、お仕置きの時間はまだ半分も過ぎていないことを告げていた。
***
おしまい