第28章 嗚呼、手に余る我が人生(縁下力)
「あぁ、それでね、力の誕生日プレゼントなんだけど……」
「え!いいよ、悪いし」
「いやぁ、それがね」
なまえが困ったように眉を寄せる。「昨日映画ついでに買いに行ったんだけど、あんま力の好みとかわかんなくって。色々迷ったんだけど、アンジーが『自分が欲しいものをあげたら?』って唆すから、結局……」
「なに?」
「怒らないでね」
無礼講無礼講、と最初にへらへら断ってから、なまえは顔を寄せてきた。え!?と思う間もなく、頬に軽くキスをされる。
「原価0円、可愛い子ちゃんからのちゅーにしました。じゃ、オヤスミ。良い夢見ろよ」
相当に恥ずかしいのか、なまえはくるりと背を向けてさっさと帰ろうとした。その腕を無言で掴む。たぶん俺が怒ったと思ったんだろう。「ヒッ」と短い悲鳴をあげて、「ごめんなさ……」とか言いかけてたけど、こっちだってもうどうしようもないくらい頭が沸騰してしまってたから、問答無用でキスをし返してやったってわけ。もちろん唇に。とびきり長くね。その後は当然、まぁそのまま走って帰って布団被ってわーごめんなさい!って叫んだんだけどさ。お約束だし。
だって、何度も言う通り、俺は17歳になったんだ。ようやくと言っていいくらい。でもご覧の通り、全然サマになってない。その上なまえの奴はあぁ見えて進学クラスの5組だし、なにより向こうの方が誕生日が早くて、俺より先に18歳になるんだから、「You need someone older and wiser」なんて偉そうに言える立場じゃ全然ないんだけれど、それでもこの子を守ってあげるのは誰かなって考えたら、やっぱり俺だったらいいなとは思ってるわけなんだ。あぁもう、どうしてこんなに格好がつかないんだろう。
***
おしまい