第2章 歩きながら本を読める二宮金次郎は凄い
『うわうわうわ!今回土方さんいいねー』
夜の8時、しかもいい歳した大人の女がジャンプを読みながら歩く様子は、さながら昭和の小学生と言ったところだ。
『うきゃー!』
大好きな土方さんの活躍っぷりにテンションはエベレスト級。
もう誰も私を止められない止まらないぃぃ!
気分は有頂天。
天にも昇る気持ちで次々とページをめくる。
『土方さん祭じゃー!今回ヤバイよー何がヤバイって土方さんが...っ!?』
人目もはばからずドでかい独り言を吐き散らして歩いていると、突然視界が暗くなり、浮遊感が私を襲った。
何だろうこれ...内臓がフワフワする...
まるでタワーオブ〇ラーで急降下してるときと同じ...
流石に違和感を感じてジャンプから顔を上げる。
『...』
あれ、これ、急降下...してる?
上を見上げると、丸くくり抜かれたマンホールサイズの穴から覗く大きな月が、私からどんどん離れていく。
あれ、これ、マンホールに落ちてる?
いやいや、ちょっと待ってよ。
たとえホントにマンホールに落ちてたとしても、普通マンホールってこんなに深いの?
いやいや、ちょっ待ってよ...
このままだと私...
『死んじゃうぅぅぅ!』
小鳥遊さくら
26歳
8月6日 金曜日 午後8:37
天に昇るどころか奈落の底へ急降下し、その短い生涯に幕をおろした
『イヤァァァー!』