• テキストサイズ
前へ しおりをはさむ 次へ

また、いつか…その日まで

第1章 先輩と俺


そこには大きな背中が見える
何よりも強くて負けず嫌いな貴方の
そして今日
俺は、あなたに言わなければならない
最後の言葉

-先輩と俺-

卒業式
次々に名前が呼ばれて優雅な音楽が流れている
泣いている卒業生が多い
だが、大抵の在校生はまだそれが理解できていない
俺はそんな中で一人宍戸さんを見つめていた
何よりも逞しいその姿に釘付けになった

3月
桜が舞って一面にピンクの絨毯ができる
その中で最後のお別れをしようと卒業生が握手をして回る
俺の番が来た

「宍戸さん…卒業おめでとうございます」

「あぁ。サンキュー長太郎」

手を握る力は強く離しがたいものだった
思えばダブルスで先輩と取り組んで来た日々は凄いものに感じた
隣にいて笑う喜び、泣いた悲しみ
その時間は今日で終わる
宍戸さんには新たな夢を追って欲しい
だから…俺は絶対に泣かない

「宍戸さん、これ。花束です…部員からのメッセージもついてます」

聞こえていますか
俺の心の叫び
隠された秘密の涙の声
あなたを思うこの友情という絆の表れ

ねぇ、宍戸さん
貴方は楽しんでくれましたか
俺という後輩がいて、どう思いましたか
その笑顔と俺の笑顔の意味は同じですか

「おう。サンキューな!」

手渡して微笑む貴方
いつもより表情が固いことは分かっています
でも、ここで貴方が微笑むならば俺もそれに答えて笑いましょう
さよならはいつかの為に言いません
先輩という大きな役目お疲れ様でした
俺にとって貴方は…宍戸さんは、永久の友であり時にライバルでもあり尊敬する人です

「宍戸さん。俺は貴方に追いつきますよ。絶対に負けません」

「言うようになったな。次会う時まで期待して待っててやるぜ」


白く涼やかに紅く華やかに
この時を終わらせましょう
また、いつか出会える日まで
先輩を越える日まで
俺の心の中だけで貴方の後輩でいることを許してください

ありがとうございました
前へ しおりをはさむ 次へ
/ 1ページ  
エモアイコン:泣けたエモアイコン:キュンとしたエモアイコン:エロかったエモアイコン:驚いたエモアイコン:なごんだエモアイコン:素敵!エモアイコン:面白い
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp