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文芸部×チア部

第13章 みつけて(R18)


翌朝。

『ごめん! 5分ぐらい遅れる』

紘夢にメッセ送信。

寝癖がなかなか直らなくて遅くなっちゃった。

「いってきまーす」

靴箱の上の鏡で、髪と制服と笑顔のチェックを超スピードでやり、家を出る。

小走りで走ってると、前に斗真が歩いてるのをみつけた。

あ…またなんか斗真と話してるとこを見られたりすると、紘夢が気にするかな。

ううん。もう大丈夫! 紘夢は紘夢しか知らない私がいるって気づいたはずだから。

「おはよう、斗真」

私は斗真に声をかける。

「よう、ナコ。今日は出る時間ちょっと遅かったのか?」

「うん。寝癖がなかなか直らなくて」

「けっ。朝から色気付いて。彼氏と待ち合わせしてるからか?」

「そうだよーん」

ちょっと無駄話をしながら歩く。

待ち合わせの公園、本を読んでいた紘夢が顔を上げる。

少し、あっ…ていう顔をしたけど、すぐ笑顔になり、私たちに挨拶する。

「おはよう、ナコ。如月」

「おはよう、紘夢。如月くんとはそこで会ったの」

「おっす。逢坂っていつも本読んでんだな」

読んでいた本をカバンにしまう紘夢を見て斗真が言う。

「あぁ。僕は本を読むのが好きなんだ。だけど、毎朝こうして想い人を待ちながら読むのは格別だよ」

紘夢がニッコリ微笑む。

うふ、素敵。

斗真が鼻で笑う。

「けっ。朝から2人にのろけられるとはな。ていうか、ナコは昔からこういうタイプが好きだよな。なよっちくて…本ばかり読んで…。ほら、あいつなんていったっけ? 雨宮? 入院してたヤツ。おまえの初恋の相手! あいつに似てるよな」

斗真が余計なことをペラペラしゃべる。

「初恋…」

紘夢がボソッとつぶやく。

ひぃ…!

「じゃあ、俺、先行くわ。遅刻すんなよ」

斗真は私たちに手を振って去っていった。

「行こうか」

私はなるべく自然な笑顔を作って、紘夢の顔を見上げる。

「うん、行こう」

そう答えて、紘夢は私の手をぎゅうっーと握る。

ニコニコしてるけど…なんかこわ…。

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