第11章 言えない言葉
それから数日後、恵さんは玄斉さんの元で働くことになり
道場を去って行くことになった
恵さんは以前より生き生きしているように見えた
「真愛さん、ありがとう」
『え?』
「私が観柳に連れ去られた時のこと、剣さんたちから聞いたわ。私を助けようとしてくれたのよね。お礼を言うわ」
『……いえ。私は――――』
何もできなかった
だからお礼を言われる筋合いはない
でも、そんなこと言ったら恵さんに失礼、かな
「そうだ、真愛さんに一つだけ言いたいことがあったわ」
道場をあとにする恵さんはくるりと、振り向く
「自分に嘘をつくのはやめなさい」
その言葉が、胸に刺さった
やっぱり、彼女には気が付かれていた
ずっと閉じ込めていた感情
でも、それも限界だ
あの時、抱きしめられた瞬間
自分の気持ちを隠す事なんてできなかった
私は、緋村さんが好きだ