第3章 チェシャ猫・ボリス=エレイ
「はあはあッ!!…アリス、大丈夫かッ!!」
「大丈夫…ッ、じゃないッ…」
鉄球から逃げる
…が、スピードを増していくそれは徐々に距離を詰めていく
「もう、ダメッ…」
アリスの足は限界だった
「…チッ、アリス!少しだけ我慢してて!」
ぐいっと引き寄せられたかと思うと両足を抱えられ…、俗に言う「お姫様抱っこ」の形になった
「ボ、ボリスッ…」
「文句なら後で聞くよ!それよりも、しっかり捕まって!」
(文句なんて、あるわけないわ…)
ボリスの顔が近い
アリスは彼の首に腕を回し、ぎゅっとしがみついた
「今日のアンタ、素直だね…ッ、可愛い…」
こんな時でも甘い台詞を吐くボリスに、アリスは苦笑いを零す
しかし、鉄球はすぐそこまで来ていた
あと少しでぶつかってしまう近さに…
(このままじゃボリスが…!)
「ボリス、私はいいから逃げて…!」
「何言ってんだよ!そんなこと出来るわけない!大丈夫、俺がアンタを無事にゴールまで連れて行ってあげるから…!」
「ボリス…」
その時、少し向こうの右側に脇道があるのに気付いた
「よし、あそこに飛び込むぞ!」
ぎゅっと目を閉じるアリスの額にちゅっとキスを落とすと、ボリスは脇道に飛び込んだ