第14章 彼と私の終着点
「征十郎っ!」
「……有栖。おはよう、走ると転ぶよ?」
くすっと笑いながら眼鏡を外す彼が、何となく普段とはちょっとだけ違って見えてドキッとする。
「だ、大丈夫だもん! 子供じゃないんだから」
「十分子供だろう」
「じゃあ征十郎も子供!」
「はいはい……。それより、そのワンピース似合ってるね」
「ほんと? ありがとう!」
「それ、重たいだろう? 持つよ」
お弁当の入った鞄を、征十郎は徐に掴んで私から奪う。私が「あっ……」と声を上げると征十郎は片方の手を私へと差し出した。
「これはお弁当だろう? 俺が持つ。だから有栖は、こっち」
手? つ、つまりこれは手を繋げと?
おずおずと手を出すと、彼の手がさっと浚うように私の手を掴んだ。ぎゅっと握りしめ、そこから確かな体温が伝わる。夏の暑さが絡みつく中でも、彼の手はほんのり体温を帯びている程度で、どちらかといえばひんやりとしていた。
きっと私の方が、彼より体温が高い証拠なのだろう。
遊園地の中に入れば、夏休みということもあり、結構な人が訪れている。人混みに紛れながら、私達は遊園地内の案内図を広げた。
「何処から行きたい?」
「まずはジェットコースターじゃない!?」
「そのワンピースで乗るのか……?」
「たぶん大丈夫だよ。ほら、あんなにスカート短い人も乗るみたいだし」
「……」
視線の先には、驚くほど短いスカートを履いた女性を連れたカップル。征十郎を見れば、ぴくりと眉を動かせて少し動揺していた。