第11章 気まぐれと笑って
「よし、こういうのはテツからいけ」
「そこは言いだしっぺの青峰君からですって」
「え? 俺かぁ? しょうがねぇな!! 俺の好きな子はな……堀北マイちゃんっ! くわぁああああいっちまったぜ!!」
黒子が何故か勢いよく立ち上がり、まさかの部屋の窓を開けた。え、何する気?
「青峰大輝君の好きな人はっ! 堀北m「うわぁあああああやめろテツ!! 何しやがんだ馬鹿っ!!!」
いきなり外に向かって叫び始める黒子を、真っ青な顔で青峰が止める。しかしこれは普通にまずい! この騒ぎを聞きつけて魔王こと征十郎が此方にやって来ないとも限らない。
「んっ? 何か足音しないっスか?」
「うげっ!? もしかして、赤司君じゃないかしら?」
「ええ!!? もう青峰のせいじゃん馬鹿峰!」
「うるせぇ! 元はといえばテツが悪いんだ!」
原因である黒子はというと、一人素早く布団の中に潜り込み、くぐもった声で「おやすみ」と呟いた。
「テツの裏切り者ぉおおおおおお!!」
「やばいっ! 皆隠れて寝たふりっス!!」
「あ、ちょっと黄瀬!?」
「有栖っちはこっち」
黄瀬に腕を掴まれ、彼の布団の中へと引きずり込まれる。誰かが電気を消してくれたのか、あろうことか至近距離の暗闇の中、黄瀬の二人きり。意識しなくても彼の息遣いがすぐ間近にあった。
「っ……」
「あれ? 有栖っち、緊張してる?」
「うっ……うるさい」
「ふっ、可愛い」
途端、襖が開けられる音がした。