第10章 月のない夜
「え……?」
「有栖! 黒子!!」
途端、全てを遮る様に征十郎が私達のいる方へと走ってくる。黒子は私から離れると、手を差し出した。
「立てますか?」
「あ……う、うんっ」
微笑んだ彼の裏側が、また雲に覆われた様に隠れて。まるで先程のことは、聞き間違いなのではと思うほどで。けれど立ち上がった私に、さりげなく耳元で黒子は呟いた。
「もっと、一緒にいたかったですね」
にっこり笑った彼に、ああもうなんだこいつは!! と思うしかなくて。ただ、何も考えないでぎゅっと手を握り返すしか出来なかった。
征十郎に連れられて、私達はようやく皆の元へと帰ったのだがいくら黒子の方へ視線を送ろうとも、もう彼はこっちを見つめない。
さっきの言葉、どういう意味だったのかな。