第7章 影は静かに見え隠れ
胸が苦しい。なんで、なんで黒子は私のことをここまで必死に探してくれたんだろう。心配して、くれたんだろう……。
嬉しくて、切なくて、申し訳なくて。どんなごめんなさいも、重みをなくしていくようでどれでも正しくない。
ぎゅっと抱きしめ返せば、黒子は「……よかった」と小さく呟いた。
耳元でそれを聞きながら、何度も心の中で"ありがとう"と繰り返した。
「行きましょう。皆のところへ」
「うん……」
「あ、その前に……下駄、なくしてしまいましたよね」
「あっ……」
そう言われてみればそうだ。これじゃあ、歩くと石で怪我をしてしまうかも。
「南雲さんは手間がかかるので、嫌です」
「返す言葉もありません……」
「ほらっ」
私の前で背を向け腰を下ろすと、おぶされと言わんばかりにそのまま待ってくれる。