第5章 数センチの距離
「有栖ちゃんもバスケ部のマネージャーになっちゃえば!?」
「え……?」
「そうすれば、もっとむっくんと一緒にいられるよ!?」
「でも……征十郎がそんな不純な動機で許してくれるとは思わないけど」
「前から思ってたけど、有栖ちゃんって赤司君とどういう関係?」
「どういう……ただの幼馴染だよ」
それ以上でも以下でもない関係。何故か最近になって、よく関わる様になってなんだか懐かしく思えるのだけど。
「へぇ……赤司君と幼馴染か! なんか、大変そうだよね」
「わかる? すっごく大変なんだよ。特に女子からのラブレターとか代わりに渡してって言われたりするからね」
「わぁ……それ面倒だよね。ラブレターは自分で渡してこそ意味があるのに」
「私もそう言うんだけどね……普通に渡すと受け取ってくれないって言うんだよ」
「確かに赤司君は受け取らなさそうだよね」
「そうなの……?」
「もう決まってるんだと思うよ」
何が? と聞くことは出来なかった。先生の合図で授業が終わる。「また後で」と言葉を交わして、私達は更衣室へと向かった。