第3章 夕陽が沈む頃
机に突っ伏して、目を閉じる。外から運動系の部活の掛け声が聞こえてくる。夕陽が降り注いで、眠くなる。エアコンがよく効いていて、そのせいか外に出るのを躊躇ってしまう。
暑いだろうなぁとか、だるいなぁとか。どうでもいいことを考えながら突っ伏していると、不意に扉が開く音がした。少し乱暴に閉められた音にびっくりして、思わず顔を上げる。
「あっ、ごめん……起こしちゃったっスか?」
「……いいや」
金色の髪が目立つ、綺麗な男子生徒が息を切らして飛び込んできたらしい。廊下からは、何故か黄色い声が響き渡る。女子生徒の声? この人、一体何をしたんだろうか。
「もうちょっと、聞いて下さいよぉ。俺ってば何もしてないのに、滅茶苦茶朝から女の子に追いかけられちゃって」
「(……! モテちゃって困るぜ俺自慢!!?)」
「俺のこと知ってる? 俺は黄瀬涼太!!」
「えっ……ああ」
誰だっけ。
「君は? 名前なんて言うの?」
「……南雲有栖」
「有栖ちゃんか! 可愛い名前だなぁ。あ、勿論君自身も可愛いよ」
「……黄瀬君はなんで女の子に追いかけられてたの?」
「それが俺にもわかんないんスよねぇ。モデルしてるせいかもっ」
「モデルしてるんだ」
「知らなかったの!?」
「興味ないんだよね、そういうの」
「へぇ……珍しい」
黄瀬君との距離が、近くなる。私の隣に腰掛けた彼は、私と同じように机に突っ伏す体制になり、こちらへ顔を向けてくる。近い、でも顔綺麗、かっこいい。近い。