第3章 夕陽が沈む頃
「はぁ……」
「どうした? もう集中力が切れたか?」
「いや……ううん、なんでもない」
嘘、不意に敦君のことを考えたらあんなにも進んでいた手元のシャーペンは、書くことをやめてしまう。進まなくなった。どうしてだろう。
「何かわからないところはないか?」
「あ、えっとね……この訳が上手く出来ない」
「ああ、そこはだな……」
緑間君は本当に教えるのが上手いと思う。お陰で、最近はテストの点もいい。一人で勉強すると、つい本の誘惑に負けていまいち出来が悪かったりする。いやぁ、お勉強が出来る知り合いって大事ですよね、うん。
「今日はここまでにしよう、俺は部活に行かねば」
「そういえば今まで聞いたことなかったけど、緑間君は部活何してるの?」
「ん? バスケ部なのだよ」
「……バスケ部なんだ」
征十郎と、敦君と、ああついでに黒子と同じ。
「バスケ部って仲いい?」
「さぁな。俺はそうでもないと思っている」
緑間君は教科書などを片付けると、鞄を肩にかけ「それじゃあな」と背を向けた。私は小さく「またね」とだけ返して彼の背を見送る。
図書館には、私一人だけ、なのだろう。