第16章 相合傘
「なんか思い出さない? これ」
「ふふ、私も同じこと思った」
「初めて会った時はさ……有栖ちんが傘なかったんだよね」
「そうそう」
「あ! てかさ、俺は有栖ちんのこと好きなわけなんだけど、有栖ちんはどうなの?」
「え?」
「それ、聞くの忘れてた。ねぇ、俺のことどうなの?」
「え!? き、嫌いではないけど……」
「好き?」
「そもそも、敦君の好きってライクなのかラブなのかさえ知らないんだけど!?」
そう私が言うと、敦君は屈んで耳元で囁く。
「……」
「で、有栖ちんは?」
「……敦君、屈んで」
秘密の内緒話みたい。彼の耳元で囁けば、敦君は微笑む。
「もっと、言って」
「いいよ」
傘を忘れて、貴方と出会う。
「好き」
もう一度、この雨と共に。