第1章 プロローグ
本で埋め尽くされた書斎でとある本を読む1人の少女がいた。
彼女の名前はサクラ シグレ。その姿はとても美しく漆黒の髪は腰まで伸びているが、傷んでいる様子はない。本の文字を追っている伏せ目がちな瞳も、神秘的だ。なぜならその瞳は深海を思わせる深い青だからだ。
本に囲まれた場所なだけあって、まるで異世界にいるような気分になる。
『はぁ。やっぱり何度読んでも好きだな、この世界。エドワードもかっこいいし、登場人物はみんな最高。もし、この世界に行けたのなら、私も変われたのかな。』
彼女の声はどこまでも透き通っていて、凛としている。しかし、その表情は儚げで、今にも消えてしまいそうだ。
彼女は立ち上がり、書斎を出ようとした瞬間、ぐらりと視界が歪み倒れてしまった。その時、かすかに声が聞こえた。