第2章 巡回
ライト「ほら、どうして欲しいか言ってみろよ」
ナギ「うっ……。頼むからそこだけはやめてくれ」
ライト「其処って何処だ?」
ナギ「お前が今触っている場所だよ!」
ライト「お願いする態度にしては随分デカイな」
ナギ「クソッ…! お…お願いします。其処だけはやめて下さい……」
ライト「よく言えたな。御褒美にこいつをやろう」
ナギ「なっ!? あ、やめっ……! あぁ!!! 」
ライト「チェクメイト」
ナギ「だあぁぁぁぁ!!! 懇願してんのに置くか普通!」
リフレッシュルームの一画を使わせてもらってのチェスゲーム。ナギのキングを完全に詰み状態にすると周りからは感嘆したのか、おぉ、と言った息が漏れた。
そして同時にギャラリーに大爆笑されながらリフレッシュルームにそぐわ無い大声と共に立ち上がるナギ。
拍子で卓上のチェスの駒が大きく揺れ、ナギ側のキングが倒れてしまった。
ライト「……。口では嫌がってもこっちは正直だな」
ナギ「あのなぁ!」
ギャラリーから更に笑いが生まれる。
ライト「勝ちは勝ちだろ。ホロロ、ランチで一番高いやつな」
ホロロ「はいよー。任せて」
リフレッシュルームの端でチェスを楽しんでいた俺は腰掛けている椅子の重心を後ろにずらして前足を浮かせる様な状態の姿勢でギャラリーの間から顔を出し、リフレッシュルーム中央にあるカウンター内から注文を待っていたホロロに向かってナギの懐具合を気にしない注文をした。
ライト「ほら、俺に賭けてた連中よ、俺を崇めろ」
「ライトさん、ありがとうございまーす!!」
しれっと場外で賭博行為をしてたのは知っていたが、どうやら倍率は1:9でナギの方が優勢だったらしい。
まぁ、ナギの知力を知ってる連中はそうだよな。未知数に俺に賭けた連中はある意味相当のギャンブラーだろう。
こっちに賭けないのも無理はない。何せ俺が魔導院に来たのはここ数日前らしい。
らしい、っと言うのはそれ以前を知らないからだ。
いや、記憶喪失とかそんなんじゃなく。
この世界は初めてだが、この『842年水の月(02月)01日』という日はもう何回も過ごしている。