第2章 ただ求めればいいもの
ゆり「悠さんのいぢわるぅ~!ゆりが悠さん好きなの知ってるくせにぃ」
"好き"という言葉に動揺してしまう私だったが、悠さんは表情を変えることなく作業を続けている。
悠「あーハイハイ…」
ゆりという名前の女の子は可愛らしくプンプンと怒って見せたかと思うとパッと笑顔になった。
ゆり「でも…カッコいいからゆるしちゃう♡」
ゆりさんのそんな様子を全く相手にしてない悠さんだったが、
遠くからその様子を見ていた私に気づくと少し驚いた後、またいつもの柔らかい笑顔を見せた。
悠「おはよう。」
ーーートクントクン
悠さんの少し低めな声に胸が震える。
「…おはよう…ございます。」
電車の中でのことを思いだし顔が熱くなってしまう。
私、悠さんと…キス…したんだよな…
今でもあのときのことは夢みたいに思える。
二人で見つめあっていると、それを打ち消すかのように高めの可愛い声が聞こえてきた。
ゆり「あなたが新人さん??初めましてっ!ゆりですっ仲良くしてね??」
とても無邪気に話すゆりさんを見て私は現実に引き戻される。
慌てて笑顔をつくり挨拶を返す。
「初めまして!花音です!こちらこそ、よろしくお願いしますっ」
駆け寄ってくるゆりさんの姿は同性の私からしても可愛く感じる。
ゆり?「花音ちゃんってすっごい美人だね~☆モテそう~!いいなぁ♡ 花音って呼んでいい??」
…いやいや、そっくりそのままお返ししますよ?
「もちろん!好きに呼んでくださいねっ」
悠「ーーー花音。今日ドリ場つくんだろ?仕込み手伝って。」
「あっはいっ!」
悠さんに呼ばれ、急いでドリ場に向かう。
ーーその後ろ姿を疎ましい眼つきで見つめるゆりがいたことに私は気づいていない。