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闇の滅竜魔導士と盗魔眼

第4章 再会と離別を同時に


何の感情も籠っていない声だった。
何を言えばいいのかわからず、エルザは俯いてしまう。


「エルザ…」


だがエルザはジェラールの様子がおかしいのに気が付く。
その様子はどこか弱々しく、何かを恐れているかの様で…。


「エル、ザ…アギト…


 その言葉しか覚えてないんだ」


「え?」


「!?」


会話が聞こえていたコブラも驚愕した。


「教えてくれないか…俺は誰なんだ…?」


ジェラールの声が…いや、体も震えていた。
頭を抱え、それでもエルザに尋ねる。


「君は俺を知っているのか?

 アギトは…彼だとわかるんだ…だがエルザとは誰なんだ?

 それ以外、何も思い出せないんだ」


悲痛な表情で訴えてくるジェラールを見、エルザの瞳に涙が溜まる。


「(コイツ…記憶がねぇのか!?)」


隠れているコブラは心の声が聞こえなかった理由が今わかった。
しかし更に幾つかの疑問が浮かんだ。


「ジェラール…」

「く、来るな!」


名をゆっくりと呼びながら、ジェラールに近付いた。
だがその行動にジェラールはビクッと肩を震わせ、エルザに向けて衝撃波を放った。

直撃したエルザの額に赤い血が伝う。
しかしそれでもエルザは表情を変えず、その場に立ち止まってジェラールを見据える。


「……」

「く、来る…な…」


弱々しくなっていく語尾。
ジェラールの顔には恐れが浮かんでいた。

そんなジェラールを見、エルザはキッと表情を引き締める。




「ならばお前が来い 私がエルザだ…ここまで来い!」

「、…」

「お前の名はジェラール…私のかつての仲間だ」

「…なか、ま……」


目を見開き、エルザの言葉を復唱するジェラール。
エルザはそんなジェラールに構わず、言葉を続ける。


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