第1章 幼少期と日常
<アギトside>
俺は汽車を乗り継ぎ、マグノリアから遠く離れた山奥の村を目指していた。
最寄りの駅で降りても山の傾斜のせいで普通の人なら三時間はかかる様な山。
その山の半分くらいの高さのところに目的の村、<ユクモ村>がある。
そう…普通の人なら…。
『よっ、とっ、と、』
俺は岩と岩をピョンピョン飛び越えて村を目指す。
我ながら鹿みてぇだな。
その後ろを、三人の影が追っていた。
「おいおい、早くねぇか」
「鹿みてぇだな」
「今まで旅を続けてたらしいからな 慣れてるのだろう」
ナツ、グレイ、エルザだった。
マスターに呼ばれた三人は、俺を見守る様に頼んだのだろうな。
やっぱり初めてだから気になるのだろうな。
本来は誰かと共に同行させるらしいが『大丈夫だ』と言ったからな。
「早く行かねぇとアギトを見失うぞ!」
「待て! アギトにバレたらダメなんだから慎重にだなぁ」
「見失ったら元も子もねぇだろ!」
「見つかった方がダメだろ!」
「やめんか!!」
『(…バレてるんだけどなー…)』
ナツ…滅竜魔導士は聴覚や嗅覚がいいの知ってるだろう?
他の人では三人の声は聞こえないだろうが、俺には丸聞こえだった。
『(言わない方が、いい…よな…?)』
向こうは見つからないようにと頑張ってるから、俺は気付いてないフリをする事にした。