どうもアヤナです。クソ眠いです。
この日記を書いている今。そう、12/14はですね。
竜ヶ崎怜ちゃんのですね。お誕生日なのですよ。
ついったの通常垢(@ayanan)の方でもお祝いイラストを描きましたが、こっちではお祝いSSをちょこっと上げとこうと思います♡
……書いてるうちに日付変わって軽くしにたくなりました
【びっくりするかな】
『怜くん、お誕生日おめでとう!』
「ありがとうございます……って、なんですかそれ!」
人生17回目の誕生日に、初めて彼女が家に祝いに来てくれた。
そんな些細な喜びを抱きながら彼女を玄関に迎え入れたのが数分前。
僕の目の前には今、僕の顔よりもずっと大きな箱がある。それこそ2Lのお茶でも箱買いしたかのようなそれに、思わず素っ頓狂な声を上げてしまった。
『ん、誕生日プレゼント』
「……見たら分かりますよ」
誕生日ときて箱ときたらプレゼントと相場は決まっているが、この箱も例に漏れずそのプレゼントらしい。中身は軽いらしいそれを両手に抱えながら、彼女は早く受け取れという顔をする。
「その箱……、中身はなんなんですか……」
『開けてからのお楽しみ。早く受け取ってよ、でないとちょっとこれ大きくてさあ』
だったらもっと小さなものにすればいいのに、という突っ込みは心の奥底に閉まっておくことにする。誕生日に折角彼女が来てくれて、折角用意してくれたプレゼントにケチをつけるなんてことはあまりしたくない。
両手でその荷物を受け取ると、なんてことはない、自分ならば片手で振り回せそうな軽さのそれに驚いてしまった。
「開けていいですか?」
『いいよいいよ、じゃんじゃんばりばり開けていって』
……じゃんじゃんばりばり?
表現に若干の違和感を覚えながら、僕はそのプレゼントの包装を丁寧に剥いで行く。紫に彩られたラッピングは、間違いなく僕の好みを察した彼女の気遣いであろう。そのことに心で軽く感謝をして、包装紙の下の紙箱を勢い良く、
「………なんですかこれ」
同じ質問をさっきもしたような気がする。いや、間違いなくした。
箱の中に箱が入っている。ボックス・イン・ザ・ボックス。しかもその箱は先ほどの箱のように丁寧にラッピングされており、さらに言うなら同じ紫の包装用紙だった。
返事はない。代わりに聞こえてくる微かな笑い声に横を向けば、彼女は腹を抱えて笑う3秒前の顔をしていた。
「………」
『ほらほら怜くん、開けなよ。じゃんじゃんばりばり』
先ほど感じた違和感が、今度は確信とともに蘇ってきた。
アホかと思った。まさか誕生日にこんなアホなことをしてくるなんて。なんで僕はこの人に恋をしてしまったんだろうと真剣に悩みながら、先ほどと同じように包装用紙を丁寧に剥いで箱を勢い良く開ける。
――言わずもがな、ボックス・イン・ザ・ボックス。
ムキになって次の箱も、その次の箱も開けた。
包装用紙を剥ぐ手が次第に雑になっていくのを感じる。全くもって美しくないが感情には逆らえない。
何より腹立たしいのが、箱の中にある箱が全てラッピングされていることであり、包装用紙が全て紫であることであり、彼女がもはや大笑いしてしまったことだった。
『ダメだ、もう、怜くん、面白、』
「なんですかもう!マトリョーシカですか!」
的確すぎる突っ込みに、ついに床を叩いて笑う彼女。
そして6個目の箱を開けたとき、その「箱」はようやく姿を見せてくれた。
その「箱」は、紫のラッピングもされていなければ開け口も他の箱とは違う、蝶と思わしき凝った装飾がされているものだった。
「……これ、」
『あ。やっと出てきた』
笑い終えた彼女がその箱を指差す。開けろ、ということなのだろうか。これでまたボックス・イン・ザ・ボックスならどうしよう、そんな不安を少しだけ抱えながら、
箱を、
開けた。
「え、」
『……怜くん、そういうの好きかなあって思って』
もう、箱の中に箱は入っていなかった。
その箱の中にあるのは、ただただ美しい音色。
言葉が出ない。音が重なって、聞き覚えのある曲を奏でていく。名前が思い出せない、しかし聞き覚えがあるということは有名な曲なのだろう。
『ほんとは、怜くんの好きな曲にしようと思ったんだけど。予算足りなくって』
びっくりしたかな、そう彼女は続けた。
びっくりするどころではない。彼女の精一杯のサプライズに、いつの間にか涙が頬を伝う。
『わ、怜くん!?』
「ありがとう、ございます……」
そうだ、僕は彼女のこんなところに惚れたのだった。アホなのに、無駄に気を配れるところ。視界の隅で笑う彼女は、やはり美しくて。
涙の中で、僕の手の中で、プレゼントのオルゴールは祝福の音色を奏でている。
おわり
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