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夢主の過去の話し。【IC21】 (0)
ボールを投げた瞬間、肘の内側がずきりと痛んだ。
放物線を描くボールは力なく地面に落ちる。
チームメイトは目を丸くし「どうしたの?」「すっぽ抜け?」と心配そうにマウンドに駆け寄ってくる。
私は「手の力が抜けた。投げすぎたかも」と手首と肩を回して笑ってみせた。
「試合近いんだから、怪我には気を付けなきゃ」
「わかってるよぉ。今日はもうダウンして見学する~」
「おっけー。キャプテンにはうちらからいっておくよ」
「あんがと~」
チームメイトにお礼を言って、私はグラウンドを出て軽いジョギングをすることにした。
ここ最近肘が痛む。
でも少し冷やしたり寝て起きれば治ってるし、たいしたことはないと思っていたから、監督やコーチ、親にも言った事はない。
もちろんチームメイトにも。
そんな感じで騙し騙し投球練習や試合をしていたある日のこと、ついにその日はきた。
中学1年春季大会に向けて練習試合をしていた時だった。
激痛が肘を襲い、私が握っていたボールは重力逆らうことなく地面に落ちる。
ベンチにいるチームメイトも監督もコーチも、一瞬息を呑んだ。
静寂に静まり返ったのはほんのわずかな時間。
数秒後にはチームメイトたちが私の周りに集まり私の名前を呼んでいた。
私の肘を見た監督が「なんで黙っていた」と険しい表情で私を見る。
野球肘。
この時はじめてその単語を知った。
だってまさか自分が故障するなんて思わないじゃないですか。
だって、痛くなかったんだもん。
寝て起きれば、冷やせば、痛くなくなっただもん。
こんな大怪我だなんて思わなかっただもん。
野球肘なんて、そんなケガ知らないもん。
痛いなんていったら、監督は、私を、試合に出してくれないじゃん。
だから、言わなかったのに。
でも、こんなことになるなら、もっと早く相談していればよかった。
「試合に出たかっただけなのに……」
ソフトボールが好きで、ピッチャーが好きで、プロの道を夢見ていた。
でも、こんなことで……。
救急車で運ばれている間、コーチが「ちゃんと治療してリハビリすれば治るから、悲観するな。大丈夫だ」と励ましてくれた。
その言葉が本当か嘘かなんてどうでもよかった。
だって、リハビリの間私はボールに触れない。
試合に出れない。
意味ないことだ。
[投稿日]
2026-02-19 01:07:51
[投稿者]
ねこやなぎ
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