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夏だ!花火だ!夏祭りだ!(鬼灯の冷徹:加々知夢)

第1章 鬼灯の冷徹 / アイスクリーム


それもそうか。滞在した二日間で分かっていたが、この管理人はとても陽気で気がいい。よく働き、宿泊客とも積極的にコミュニケーションを取ろうとする姿勢は加々知も気に入っていた。サービス精神が旺盛な彼女にとって、むしろお金を払う方が失礼なのだろう。脳裏に浮かんだ疑いはもう消し去り、加々知は彼女の気持ちに甘んじた。

「そうでしたか。では遠慮なく、いただきますね」

「はい!」

嬉しそうに笑顔を携えた彼女を見て、加々知の行動は正解だと確信を得た。

普段は仕事浸けな加々知。一癖も二癖もある連中に囲まれている環境も、ウォーカーホリックな彼にとっては心地がいいが、こういう計算の無い人間と過ごすのも、存外、捨てたものではないと実感する。リラックスする空間には必要不可欠な、ゆったりとしたオーラを纏う球代の存在は心地いい。

「折角ですし、ご一緒に食べませんか?」

「是非!」

気付けば自然と彼女を誘っていた。どうせ長い間、外は騒がしいままだろう。暇を潰すなら一人で黙々とアイスを食べるより、会話を交えた方が楽しいはずだ。快く誘いを受けた彼女も、これまた嬉しそうに自分のアイスと共に加々知の隣へと腰を下ろす。共に手を合わせて「いただきます」と口にすれば、それが世間話の始まりを合図した。

「加々知さん、台風の所為でつまらなくないですか? 他のお客様は帰っちゃいましたし、この天気じゃ外も行けない。確か天候が良ければ、今日は『NEO公園』でワラビーを見に行く予定だったんですよね? 凄く楽しみそうだったから、ガッカリしてません?」

客商売をしているからか、洞察力の高い球代はすぐに加々知の喋りやすい話題を持ち出す。

ここ数日、加々知がワラビーに会える事で有名な「NEO公園」のチラシを持ち歩いていたのは周知の事実である。今もテーブル上に置いてあるソレは、彼の行きたい気持ちを表しているようだ。

しかし台風も目的の内であるため、そんな球代の心配を加々知は否定した。
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