第1章 髪垂れた未来を
それは五年前まで、かぶき町で万事屋を構えた一人の侍と関係している。飛び跳ねる銀髪と死んだ目が特徴の男だった。普段は下品な態度をとる怠け者、パチンコで家賃を失う頭の足りない馬鹿と説明すれば大体は合っているだろう。けれど、一度でも彼の世界に入れば、背負われてしまう。一度でも関わってしまえば、彼に護られてしまう。一度でも彼に心を掴まれてしまえば、もう離れられはしない。
浄も不浄も受け入れてしまう町、かぶき町。まるでその町の化身であるかのように、その男は関わってきた者達を見捨てる事はなかった。平和な日常では周りと共に馬鹿騒ぎをして笑い、苦しむ者がいれば救い上げる。
だからだろうか、彼も彼の住む町も、人々に愛され続けた。絶望の淵に立たされていても、どんなに長い時間を苦しみで費やされても、ふとした切っ掛けでかぶき町は立ち上がる。彼のために立ち上がれた。そうして今、かつてその男———坂田銀時と言う男が結んだかぶき町の縁が、愛する町を取り戻すため、久方ぶりに集う。
沖田総悟もその一人であった。武装警察真選組の元一番隊隊長であり、今では「人斬り」の名で知られている。緋色の着物に鼠色の袴、そして腰には逆刃刀を帯刀した長髪の沖田総悟は、白詛の元凶である魘魅の捜索活動に参加していた。
参加していたと言っても、元々サボり癖の強い沖田に「真面目に探す」などと言う芸当は不可能に近い。良くて捜索の際にペアを組んだ土方十四郎の後を着けるのが限界だろう。現に、ゴロツキに暴力付きの聞き込み作業を行っているのは土方のみであり、沖田はその様子を横目で欠伸を噛み締めながら傍観しているだけであった。