第3章 元彼を諦めるには
その言葉は、あの日、幹也が電話を切ってくれた日のあの言葉と重なって、安心と胸がいっぱいになるような、それでいて心地よく締め付けてくるような気持ちを溢れさせた。
「………幹…也。」
「俺のこと、使えよ。」
「え?」
「アイツのこと、忘れるために、俺を利用しろよ。」
「…………どういうこと?」
「蒼子…………、」
「俺と、付き合わねぇ?」
「………………っ、」
「別に、俺のこと好きじゃなくても良いよ。
アイツのこと、忘れるために、俺と付き合って、気を紛らわせて、利用しろよ。」
「そんな、こと…………だって、」
私は言葉に詰まって、俯いてしまった。
「そんなの……絶対辛いよ。
……ていうか、いきなりなに?
私、自力で透のこと諦めたいし、そんな幹也傷付けるようなことしてまでしないと自分を救えないほど弱くない。」
「…………蒼子、」
「私、弱くない。
1人だって平気だし………」
「蒼子っ!!」
「───っ、」
「じゃあなんで泣くんだよ!!」
そう言って幹也は、片手で私の目を覆うようにして隠した。