第6章 キスをして
『もしもし? おはよう新八~おめめは覚めたか?』
「昨日の今日でふざけんな! 今大学だよ!どこにいるんですかッ!」
『……学食。けど来んなよ、デート中だから』
「な」
『んじゃまた~』
プツ、と切れた電話。
「ふざけやがって!」
ダッと学食に向かって走り出す。
あんなことをしておいてあんなことを言って おいてデートだと、と廊下を駆ける。
食堂に入ると、ガランとした広い中に、ポツンとだけが座っていた。
「……よお」
「……デート中じゃなかったんですか……」
「俺の言うことを素直に信じるとは、お前もまだまだだなあ新八くん」
にま、と笑って頬杖をつくに拳を握りしめる。
そのまま歩み寄り、座ったままのを立ったまま見下ろした。
「……昨日のも冗談なんですか」
「……」
「素直に信じたら、馬鹿なんですか」
言えば、は黙って椅子の背に身体を預ける。
「……信じてくれんの?」
天井を仰ぎながらそう呟くにため息をつき、新八はカウンターに向かうと 「ショートケーキ三つとフルーツケーキとシフォンショコラとベイクドチーズ ケーキで」と注文した。
注文品を受け取り、テーブルまで戻ってどんと置く。
「これ全部、奢ってください」
「……新八」
「そしたら、……信じてやってもいいですよ」
しばらく呆然としていたがぷは、と吹き出し、新八は何ですかと牙を向く。
の柔らかい視線はどこか泣き出しそうな、それでも酷く喜びに満ちたものだった。
「新八~、愛してる」
「キモい」
「イチゴちょーだいっ」
「やらねーよ!」
ある春の、暖かい日のこと。
*END*