第3章 マヨのお仕置き
一富士、二鷹、三茄子……そして続く縁起物。
夢に関して語られる縁起物はたくさんある。
俺の初夢はカラスだった。カラスは、縁起が悪いものとなっている。
―年の初めに、これ以上無い不吉が、俺を襲ったのだ。
例年、大晦日は事件が多いということで、 警察組織は、ウチに限らずどこも大忙しだ。
ここ、真選組は当然厳重警戒で、一部は通信連絡、その他業務で屯所に二十四時間体制で詰めたまま、
そして俺達鉄砲玉、戦闘要員な どは眠気と格闘て、延々と外回りだ。
俺はまだ勤続二年目で、だからこの経験も二度目、
去年は運転しながら盛大に居眠りして 、見事に縁石に乗り上げ、後日八時間正座の刑と始末書と減俸の洗礼を受けた。
今年もそんなことをしたら多分…それだけじゃ済まない。
恐らく切腹確定、勿論それは嫌だ。
「」
助手席から声がかかる。
「ふぁいっ!」
「…落ち着け」
どうして切腹確定かって?
そんなのは決まっている。
去年の失態を受けて、この人が直々に俺の見張りに出てきたのだ。
「去年のことを忘れられちゃ困るが、力みすぎだ 」
「はい、すいませんっ」
土方十四郎……鬼の副長と恐れられる人物で 、見えるところでも目立たない所でも本当に怖い。
文武両道の才人で、同じく才人だが性格が物臭の沖田隊長に比較すれば完ぺき主義に近い所すらある。
尊敬はしている、少なくとも隊長よりは。
…でも最近…夜中に変なアニメ見てるって噂があるんだよな…それは嫌だけど…。
「お前、よく免許取れたな」
ガチガチで些細なミスを繰り返す俺に訝しげな声で訊ねる副長。
「いや、いつもはこんなミス…」
「既に寝ぼけてる…なんてことは無いよな ?流石に…」
チラリと横目に確認――できない。怖い。見 なくても怖い顔されてるのは十分に想像できた。