第14章 犬と猫のおたわむれ
とある連れこみ宿の朝。そこの一室から男二 人の奇声があがった。
「「ぎゃああああぁぁぁぁああっっっ!!」 」
その絶叫にさすがに店の者も戸口に立ち声を 掛けた。
「お客さん、どうしました?大丈夫ですか? 」
「だだだだ大丈夫だ!ななななななんでもね え!」
とても大丈夫とは思えない動揺しきった声を は張り上げた。
店の者が離れるまで2人は息を殺して様子を 窺っていた。
「「……………」」
黙ったままと銀時はお互いを見つめ合う と安堵とも困惑とも言える溜め息を吐いた。
「くぅん…」
「なに?」
不機嫌なツラで返事をしは煙草を咥えた 。
「なんなんだろね、これ。なんなんだろね、 それ」
「知るかよ」
久しぶりのとの逢瀬に楽しんだ銀時。の明日の出勤は遅いってことで連れこみ宿で散々愛し合い声が枯れるまでやりまくって寝た。
それだけなのに……
「なんで耳と尻尾生えてんだぁぁぁあああっ っっ!」
目覚めれば生えていた耳と尻尾。銀時は銀色 の毛でどう見ても猫の耳。は黒毛でどう見ても犬の耳。耳も尻尾も引っ張るとちゃんと痛いし意識して動かせる。
「っ!てめえ真選組で押収した怪しげな薬でも飲ませたんじゃねえのか!この変態酒のみやろーが!」
「俺にこんな趣味はねえっっっ!そういうて めえこそ万事屋で怪しげな仕事依頼でもして 変な薬を面白がって俺に飲ませたんじゃねえ のか!この変態糖尿!」
「やるかぁっ!!俺がやるならこんなイタ面 白い事てめえ一人にしかやらねえよ!」
「やるんかいっ!」
口喧嘩は延々と続き、お互い不毛だと気付き 止めたのは10分後だった。
溜め息を吐いた銀時は昨日の酒のツマミの残 りを音を立てて食べ始めた。
「取りあえずよぉ…当面の問題はこの耳と尻尾だと思うんだにゃ」
……『にゃ』!?
スルメを咥えたまま自分の言葉に銀時は固ま り、は灰が落ちるのも気付かず凍りつき 、瞬間二人の男は全身鳥肌が総立った。
「にゃにゃにゃ?にゃに?俺ににゃに起きて んにゃ!?」