第13章 君と一緒っっ!
ズレ始めたと思っていた気持ちは、全然、ズレてなんかいなかった。
抱きしめられた状態で暫くの沈黙を守ったのち、 が口を開いた。
「なぁ、俺も一個、聞いていい?」
「なに?」
この際だから、お互いの気持ちを確かめ合おう。 そんなノリで、聞かれたことには正直に答えてやるつもりで、神威は返した。
「銀さんが言ってた、キスの御礼ってナニ?」
は、居酒屋の個室での銀さんが最後の言葉が気になっていた。
神威の頭に一気に思い出される、銀時との忌ま忌ましいキス。
が、自分と同じ気持ちでいてくれた。そのことで満たされ過ぎていて、神威はすっかり銀時とのキスを忘れていた。
あのまま、忘れていたほうが幸せだった。と神威は思う。
「…俺も忘れるから、お前も忘れて。」
神威の様子がピリピリしたものに変わり、そして強い眼差しをに向けながらそう言った。
「いいね?」と立て続けに言われて、はその真剣な表情にコクリと頷くしかなく、キスの御礼の真相は闇へ消えることとなった。
クソ…
神威は心の中で毒付く。
『は女をお持ち帰り出来るかどうか』てはなく、『は女とヤれるかどうか』で賭けをすれば、俺の勝ちだった。
そう思うと悔やまれる。
悔しさまぎれに、神威はぎゅっと更に強くを抱きしめたい。
「も、一個いい?」
「ん。」
抱きしめられたには、聞きたいことではないけれど、言いたいことがもう一つあった。
「あのさ…背中……。手、汚ねーんだけど。」
背中に回された神威の手。それは確か、さっきが汚した手。
ということは、背中のベトベトの正体、イコー ル……
「汚いって、自分のだろ」
「……そうなんだけど」
言っても、神威は暫くを抱きしめたままだっ た。
キスのことを聞かれ、恋人に浮気の追求を受けたような気持ちになったことは、には内緒にしておくことにした神威だった。
*END*