第8章 strategie⑧
俺とヒロカはぐったりとした体を並べて横になった。
呼吸を二人で整えながら無言で天井を仰ぐ。
なにを喋ったらいいんだろう。
「イクの早すぎたなー。気持ちよすぎや。」
そういうとまた子供みたいにヒロカはケラケラと笑った。
俺がタバコに手をとると、ヒロカも追いかけるように手にとった。
「この一本が最高だよな。」
「だね。あと寝起きの一服ね!」
「俺寝起きは何故かあかんわ。」
「え?なんで??」
「なんか気持ち悪くなる。クラクラするし。」
「えー!タバコ向いてないじゃない?」
「そうかもしれんなあー。禁煙するか。」
「いまさら笑笑」
二人は別れの時を忘れるようにどうでも良い会話をしてその場を必死に繋ぎとめた。
「バンジーやったことある??」
「えっ??バンジージャンプのこと?昔番組でやった気する。」
「わたしやったことない。怖い??」
「覚えてへん。」
「覚えてないってことは怖くなかったんだね。」
「やりたいの??」
「うん。でもまだやんない。」
「なんで?」
「わたしバンジージャンプは人生の節目にやるって決めてるの。」
「なんやそれ。」
「ここぞという時。人生を大きく左右させる勝負の時とか!」
「よく分からんわ笑」
「分からなくていーの!」
朝が来て欲しくなかった。暗闇の中でずっと二人きりでいたかった。
腕枕をしながらどうでも良い会話を繰り返し、やがて口数を少なくなってきて、気づいたら二人して寝ていた。
彼女の温もりを感じながら墜ちていく夜は最高に心地よかった。
次の日目覚めたら彼女の姿はなかった。