第5章 three
だが、俺が叫んでも表情は一つも変えず、冷静だ。
もう少し強かったら俺のクインケになって大分役に立っていただろうが、喰種としてはもうここで終わりだ。
そうして、俺は飛びかかる。
「ッハァッ‼︎」
その一撃はかわされ、相手も一撃いれてくるが俺もそれを避ける。
避けると同時にクインケを横に振り、相手の背中を目掛けて打つ。
「ぅあッッ⁉︎」
その一撃は命中。
倒れこんだ相手に近づく。
「あまり戦い慣れていないな...残念だが、お前はここで死ぬんだ。」
傍まで近づくと、見下しながら俺は言う。
「人間を意味なく無惨に殺し、そして喰らう。この世界を歪めているのはお前達だ。」
そう この世界を歪め、残酷な世界にしたのは喰種だ。全て....全てこいつ等のせいなんだ。
ゆっくり、相手の顔の上にクインケを持っていく。死ぬというのに、こんな時でさえ女の喰種は一つも顔を変えない。
そうして、クインケを下に降ろそうとし手に力を入れた時、女の喰種がいきなり喋り出した。
「お兄さん強かったよ。でも、私はまだここでは死ねない。人間が1番の正義だと思い、そのクインケを振り回すことを否定はしないけど
人間は正義なんかじゃない
正義はどこにもないんだよ。喰種が1番世界を歪ましているのだと思うなら、それはまだ甘い考えだよ
もっと広い目で見てみて
この世界を」
長々と喋り、おかしな事を言い出した喰種に気を取られていた。
その瞬間、相手がすぐに体制を戻し、俺の足に足をかけるとその足を引いてこけさせられる。
「...この世界は、お兄さんが思っているよりもっと厳しい。」