第7章 Secret Circus
部屋の中はゴシック調に統一され薄暗く、中心に料理が並んだテーブル。
食堂なのだから当たり前だが一ヶ所気になる所があった。
座席が全て同じ方向に向けられ、その方向には小さなステージのようなものが。
「こちらへ」
ジョーカーの案内のもと扉のすぐ近くの席に坊っちゃんが座り、私とセバスチャンが坊っちゃんの背後に立つ。
すると私達が通された扉とは反対側の扉の向こうから金属が軋むような音が聞こえた。
そして扉が開き入ってきたのは…。
「来てくれたんだね、ファントムハイヴ伯爵。ああ…夢みたいだ!君がこんな近くにいるなんて!」
入ってきたのは美しい人形のような少年と少女が押す車椅子。それに乗るタキシードを着た包帯姿の男。
まさか、この男が、あのケルヴィン男爵…?
私の記憶の中の人物とは全く一致しない。
「こんな姿で君に会うのは恥ずかしいんだけど…」
「…貴殿がケルヴィン男爵か?」
坊っちゃんが眉を潜めながら問う。
「そうだよ。改まるとテレるな。君のためにごちそうを用意したんだ」
その言葉と共に扉が開き料理が運ばれてくる。が、それらを運んでくるのは目が虚ろな子供達だった。
「ワインは1875年物。君が生まれた年のワインだよ。ちょっとキザだったかな」
ジョーカーが注いだワインをセバスチャンが一口口に含んだ。
「毒は入っていないようです」
「フン。鼠に出された料理などに手をつける気などない。毒味は不要だ。―――それより、あの子供達…」
坊っちゃんの視線を追うと料理を机に並べる子供達を見ていた。
子供達の人数を見る限り警察からの資料を越えてるように思える。
「警察に上がってきている情報以外にも被害者がいると思ってよさそうですね」
「しかしあの様子は…」
「そうだっ」
坊っちゃんの言葉を遮りケルヴィン男爵の大声が響いた。
「ただ食事をするだけじゃ伯爵も退屈だよね。ジョーカー、アレやっておくれ」
そう言われたジョーカーは見るからに狼狽えた。
「え…!し、しかし…」
「いいからやってよ」
「……はい…」
使用人という立場がためかジョーカーは承諾し目の前のステージの袖に消えて行った。