第7章 Secret Circus
屋敷内を探して数分。アグニさんはすぐに見つかった。
アグニさんはインドから持ってきたカーリー女神の木像の前にいた。
「アグニさん」
アグニさんは大げさに肩を揺らし振り返った。
「ネイラ殿…」
私はゆっくりと大股に歩きアグニさんの前で立ち止まった。
そして彼の灰がかった瞳を見つめ口を開いた。
「アグニさん。私を避けていませんか?」
「い、いいえ…!そんなことは…」
目をそらし明らかに口ごもったアグニさんを見ると、やはりそうなのか、と気落ちしそうになるのを堪え言葉を続ける。
「私が女だから、ですか?」
「違います…!」
思いがけない言葉が頭上から降ってきたためか、それとも言動がまったくもって一致していないためか…さすがの私も頭にくるものがありますね…。
「なら…何ですか!?今日の貴方は…?!私も女だということを話していなかったことに落ち度はあります。しかし、それでも、貴方の態度は許せない…!」
思いもよらず大きな声が出た。坊っちゃんのこと以外でこんなに感情的になるなんて初めてで、だけど、自分を止められなかった。
「私にとって…アグニさんは、初めての友人なんです…!だから…だから…!こんなことで失いたくない…!」
そう、私には“友”と呼べる者がいない。
家のこともある。けれど、それ以外ではずっと坊っちゃんの執事として過ごしてきた。その生活で出会った人達は仕事上の仲間や主人のお客様で友人と呼べる者は誰一人といなかった。だからアグニさんは同じ執事の仲間として友人と呼べる人だと思ったのだ。