第7章 Secret Circus
「小生のお客さんにこの子供達はいないし、裏社会での噂も聞かないねぇ」
「つまりこの事件については何も知らない?」
「そんなことないさ。“知らない”ということを知ってるよ」
私は口には出さないが、思ってしまった。
屁理屈では…?と…
「騙したのか?」
「騙してないさ。立派な情報だろう?」
まあ、そう言えなくもないような…?
「確かに」
隣に立っていたセバスチャンは口を開いた。
「貴方が知らないという事は子供達が裏社会で殺された事実がないという事」
「なら、表でも裏でも遺体が上がっていないとするなら、子供達は生きている確率が高そうですね」
「となれば…例のサーカス団を直接調べるしか道はないということか」
坊っちゃんはそう言うとアンダーテイカーに背を向け歩き出した。
「そうと決まれば行くぞセバスチャン、ネイラ。アンダーテイカー、何か情報が入ったら連絡をくれ」
預かっていた坊っちゃんのコートを坊っちゃんに渡したところで、アンダーテイカーが声をかけた。
「伯爵、魂は一人ひとつ。大事におしよ」
「?そんなことはわかってる」
坊っちゃんはそう応え、葬儀屋を後にした。
気のせいでなければ、坊っちゃんに言ったとき、長い髪で隠れているアンダーテイカーの瞳が私の方も見ていた、気がした。