第26章 行ってらっしゃいとおかえり
私は一年近く、この国を離れていた。
揺らぐことのない事実。
それだけあれば、嫌でも切り替えなければならない。
私はジャーファルが大好き。
前と変わらず愛してる。
だけど、一線を越えてはいけないから…他人でいなくちゃいけないから。
(どうか…伝わらないで。)
一年というのは、長いようで短くて。
でも私とセリシア、二人が恋人から他人になるのは可能な時間で。
私は貴女しか好きにはならない。
それは今でも断言できる。
けれど。
(伝えないから、黙っててください。)
それぞれ胸に抱く想いは同じで。
でも関係性を変えられない立場で、変わることが怖くて言葉に出せない。
表情にも行動にも。
それでも願う。
もう一度会えたことに喜びを…。
過去のような幸せは望んではいけないから、どうか笑っていられることだけ許して欲しいと。
((好きなことは変わらない。だから…どうかこのまま、平和な日々を。二人で笑っていられますように。))
END