第26章 行ってらっしゃいとおかえり
ジャーファルside
ちゃんと話せている。
隣で、友人のように。
「もしシンドバッド王が好きな人を作ったなら、すぐに結婚を許すんですか?」
素朴な疑問だったのだろう、セリシアは尋ねてくる。
「王の私情に口を挟みはしませんよ。…まあ、認めるかどうかは別の話ですが。」
シンがいい加減な人を妻にするとは思え…なくもないですけど、歓迎は出来ないかもしれませんね。
セリシアのようにシンドリアに貢献してくれる人ならともかく。
…ああ、でもセリシアは駄目ですね。
彼女が、シンとはいえ他の人の隣にいるのなら…もうこの国にはいられない気がする。
私は一線を越えられないのに、他のものはたやすく越えていく。
…そんなもの、見たくない。
「あはは…。でも、それだけ想ってくれる人がいるっていいですね。まるでシンドバッド王のお母さんみたいですけど。」
「…お母さん、ですか…私男なんですけど。」
「もちろん知ってますから。」
それでも、私は彼女の隣にいたい。
せめてシンドリアにいる間だけでも…そばにいたい。
一線はこえないから、どうか…どうかそばにいさせてください。
たとえそれが、自分の首を絞めることになっても。