第26章 行ってらっしゃいとおかえり
ジャーファルside
「…嘘ですよね?」
ついに幻覚でも見え始めたか…とはさすがに思えない。
というか、もしこれが幻覚なら微かだが感じ取れるこの気配は一体なんだというのか。
そこまで感覚がおかしくなるわけがないしなってたまるか。
「何故…ここに。」
なんて言っておきながら、自然と口角が上がる。
いるはずのない彼女が…セリシアが、そこにいた。
ゆらゆらと降りてきていたのに、急に角度を変えてスピードを上げて…こっちへ来た。
彼女も私を見つけたのだろう。
…屋根伝いに登ってこれば、さすがに目に付きますよね。
でもここは少し危ないな。
ヒュッ
縄鏢を使いながら王宮で1番高いところへ走る。
ちらりと上を見ると、少しの間下降を止めその場から高度を変えず回っていた。
多分、移動しだした自分に理由を図りかねたのだろう。
少しして意図を察したのか、くるくる縦に横に回りながら同じ場所を目指してくれた。
あんなに激しく飛んでいたら、魔力が切れそうなものだが。
トン
元々上を目指していたこともあり、すぐにたどり着く。
「おいで。」
手を広げて、空から降りてくる彼女を待つのはほんの少しの時間だけだった。