第59章 夜空に咲く、大輪の花

「……君の肩身が狭くなって、
この世界を嫌になったら、
俺に付いて来てくれるかと思って。」


穏やかな声が耳元をかすめた瞬間、
心臓がドクドクと音を立て、
素早く全身に血液を送り始めた。



「凛。
君は相変わらず感情が顔に出やすいな。」


頬に当てられたエルヴィンの手が
冷たく感じるのは、
自分の顔が熱く火照っているからだろう。


「え、エルヴィンにそういうこと言われたの、
初めてだから……」

エルヴィンから視線を逸らしながら
やっとそれだけ言うと

「そうだな……
でもこれは、ずっと心の奥底で
思っていたことなんだよ。」

エルヴィンはそう言って
凛の頬に当てた手を、首筋まで滑らせた。


「……俺も範司と同じで、
後悔はしたくないんだ。
だから俺は、
最後くらい君を誘惑する選択をした。」