第58章 浴衣の効果
「この浴衣、館長と館長の奥さんが
昔着ていたものらしいです。
タンスで眠らせておくのは勿体ないから
是非着て欲しいって言ってましたよ。」
「ほう……悪くねぇな。」
リヴァイは浴衣を広げ、まじまじと見ている。
きっと、きなり地の浴衣はリヴァイに、
黒地の浴衣はエルヴィンに、
と思って贈ってくれたのだろう。
二人がその浴衣を着ている姿は、
容易に想像できた。
「またいつでも手伝いに来て欲しい、
って言ってましたが、
明日の夜……でしたよね……?」
少し表情を曇らした火口の一言で、
心なしか濁った空気が流れる。
が、それを拭い去るように
「火口。そんな悲しそうな顔しないの。」
と、範司は小さく笑って、
火口の肩を優しく叩いた。